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ID管理が重要な3つの理由

最近、セキュリティ対策で『ID管理』という言葉をよく聞くけど、なぜそんなに大事なのか?この記事では、なぜID管理が現代のセキュリティの要と言われるのか、その理由を分かりやすく解説します。

なぜ今「ID管理」が重要?セキュリティの考え方が変わった3つの理由

理由1: 攻撃者の"狙い"が変わったから

かつてのセキュリティ対策は、会社のネットワークと外部のインターネットの境界線に、ファイアウォールという堅固な「壁」を築いて守るのが主流でした。これを「境界型防御」と呼びます。
しかし、今はクラウドサービスの利用が当たり前になり、自宅やコワーキングスペースから仕事をするハイブリッドワークも普及しました。会社の重要な情報やシステムは、もはや社内だけでなく、クラウド上の様々な場所に置かれるようになっています。
こうなると、攻撃者はわざわざ手間をかけて壁を乗り越えようとはしません。代わりに、社員のIDとパスワードを盗み出し、本人になりすまし、クラウド上の正門から堂々と侵入することを狙います。また、過去に流出したIDとパスワードの再利用やフィッシング詐欺などは、非常に低コストで効率的な攻撃手段になっています。
つまり、守るべき対象がネットワークの「境界」から、利用者一人ひとりの「ID」に変化しました。だからこそ、IDをしっかり保護することが、情報を守る第一歩となります。
LinkedIn データ流出 (2012, 2016再流出)
約1億件超の認証情報が流出し、以降のパスワードリスト攻撃の温床に。
引用元: Wikipedia
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Yahoo! 大規模流出 (2013–2014, 公表2016)
約30億アカウント分が漏洩。過去最大級のID流出事件。
引用元: Wikipedia
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理由2: 情報への"アクセス"を適切に管理するため

皆さんの会社でも、Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce など、様々なクラウドサービスを利用しているのではないでしょうか?
社員が使うサービスが増え、働く場所も多様化すると、「誰が」「どの情報に」「どこまでの権限でアクセスして良いのか」を管理することが非常に複雑になります。
ここで重要になるのが、「最小権限の原則」という考え方です。これは、業務で使う必要最低限の権限だけを利用者に与えましょうというセキュリティの基本ルールです。
しかし、サービスごとにIDがサイロ化(バラバラに管理されている)した状態では、この原則を守るのは大変です。例えば、異動に伴い、各サービスの設定画面を開いて権限を変更し、退職者が出たらすべてのサービスからIDを削除する…。このような手作業は非常に煩雑で、設定ミスや対応漏れのリスクも高まります。
その結果、本来アクセスすべきでない情報への権限が放置され、知らないところで悪用されるなど、IDの管理が煩雑になることは、あらゆる面でリスクを抱えることになります。
こうした流れから、現在では、これらバラバラになってしまったIDをまとめ上げるID管理ソリューションを各社が提供しています。IDと権限を一元的に管理し、アクセスを正確にコントロールするための土台を築くことが必要です。
ベネッセ個人情報漏洩事件 (2014)
元委託先社員が顧客情報3,500万件以上を不正持ち出し。退職者・委託先アカウント管理の不備が背景。
引用元: NHKニュース
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www3.nhk.or.jp

理由3: 多様な"働き方"を安全に実現するため

コロナ禍を経て、私たちの働き方は大きく変わりました。オフィスだけでなく、自宅、コワーキングスペースや出張先など、様々な場所から、会社のパソコンや個人のスマートフォンを使って仕事をするのが当たり前となりました。
こうした、「いつでも、どこからでも、スムーズに仕事ができる環境」は、従業員の生産性を高める上で非常に重要です。その一方で、情報セキュリティの観点では、場所やネットワーク、デバイスなどに関わらず「不正なアクセスは確実にブロックし、情報を守る」ことが必須となりました。
ここで大切なのは、利用者のIDそのものだけでなく、どの端末から、どのような経路でアクセスしているのかといった状況をあわせて把握することです。こうした情報を組み合わせて判断することで、安全性を確保しながら柔軟な働き方を支えることができます。
「誰が、いつ、どこから、どのデバイスでアクセスしているのか」をIDに紐づく情報として正確に収集・把握し、認証を強化することで、セキュリティを犠牲にすることなく、チームの業務効率を高める環境を構築できます。
Marriott ホテルグループ 顧客データ流出(2014–2020, 2025和解)
数億件規模の顧客情報が流出。のちにアクセス監査・管理を強化。
引用元: AP News
Marriott agrees to pay $52 million, beef up data security to resolve probes over data breaches
Marriott International has agreed to pay $52 million and make changes to bolster...
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apnews.com
og:image

まとめ

これからのセキュリティは、もはや「どこからアクセスするか」ではなく、「誰がアクセスするか」が最も重要な判断基準となります。
ID管理は、単なるログインのためだけの仕組みではありません。クラウドとハイブリッドワークが前提となった現代のIT環境において、会社の情報を守り、事業を継続させるためのセキュリティ基盤そのもの。つまりID管理は、現代の働く環境を支える土台になっているのです。
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